魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
戻って来たカラスを、アランがヨシヨシとなでてれば、そのカラスは、アランの手に、そっと男の子の人形を差し出した。
胸に大きな穴が空いた、あのボロボロの人形を……
「ごめんね、カール。すぐに治してあげるから……でも、その前に」
すると、アランは、また俺を見つめた。
「君、どうやって、ここに入ったの?」
「ど、どうやってって……っ」
人間よけの結界がなんたらって言ってたから、ここに人間がいるのが、気に入らないのかもしれない。
だけど、そんなこと言われても、普通に、玄関から……入りましたけど??
「アラン様、落ち着いてください。彼は私の恩人です!」
すると、俺とアランの間に、今度はシャルロッテさんが割り込んできた。
小さな体で必死に、恩人だと叫ぶシャルロッテさん。だけど、そんなシャルロッテさんにアランは
「恩人? この僕が張った結界の中に入るなんて、ただの人間とは思えないよ。魔族か、天使が化けてるとしか思えない」
「た、たしかにアラン様の張った結界は完璧です。でも、彼の波長は、アラン様にそっくりなんです。きっとそのせいで、結界がアラン様と勘違いして」
「波長がそっくり? 人間と僕が?」
「はい。それに、ハヤトは、本当にただの人間で、私の恩人なんです! 彼は、私のケガを治してくれました。それに、メビウスにハーツを壊されそうになったところを助けてくれたのもハヤトです。アラン様、彼は……ハヤトは私たちの味方です!」
ん? メビウスってだれ? って、一瞬思ったけど、多分あのベビ男のこと。
すると、それから暫く黙り込んだアランは、シャルロッテさんを抱き上げると、さっき傷ついていた縫い目を確認する。
俺が、縫ってあげた場所。
だけど、まじまじと見つめられると、すごく緊張した。すると、その後アランは
「へー……綺麗に縫えてる。本当に、シャルロッテのこと助けてくれたんだね。ありがとう」
「え、あぁ……」
さっきとは打って変わって、柔らかく微笑んだアランに、俺はほっとした。
良かった、これで助か──
「でも、ごめんね。どのみち、僕たちの姿を見た人間を、このまま帰すわけにはいかないから」
「……え?」