魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
「行けー、颯斗ー!!」
秋も深まる10月。俺はその日、ゴールポストにシュートを決めていた。
桜川小学校。この日の五時間目の授業は、クラブ活動の時間で、サッカークラブに入っている、俺『威世 颯斗』は、 二チーム・赤と白に別れて、試合をしていた。
四年生から六年生までの男女が入りまじるその試合は、かなり白熱していて、俺がシュートを決めたと同時に、試合終了のホイッスルがなり響けば、同じチームの生徒たちが、一斉に俺のもとに集まってきた。
「うおっしゃァァ!! やったな、颯斗!」
「すごーい、威世くん! カッコイイ~」
「やっぱ、威世はサッカーの才能あるよ! Jリーグ入れるぜ、Jリーグ!」
「……そ、そうか? ありがとう」
試合は、8対7で、俺達「白組」の勝利。
クラスでも、それなりに背丈があって、赤毛の髪が特徴的な俺は、誰もが認めるほどサッカーが上手かった。
もともと運動神経はよかったけど、サッカーに関しては『威世がいれば必ず勝てる!』なんて言われてるほど。
だけど、Jリーグなんて、そんな大それたことを言う友人たちを見て、俺は苦笑いを浮かべた。
サッカーは、好きだし楽しい。
カッコイイとか、すごいと褒められるのも、もちろん嬉しい。
だけど、俺には、誰にも言えない秘密があった。それは……
「颯斗~、今日の放課後、またサッカーやろうぜ!」
「……え?」
タオルで汗を拭きながら考え事をしていると、また別の友人に声をかけられた。
短髪でテンションの高いその男子の名前は、九条 勝也──通称・勝っちゃん。
勝っちゃんとは、幼稚園のころから仲が良くて、放課後は、よく一緒に遊んでるんだけど
「あ、ごめん。俺、今日は用事が!」
「えー、颯斗これないのかよ~。じゃぁ、本田は?」
「あ、俺もムリ。サッカーボールがなくなっちまって」
「え、なくなった? なんで? この前、新しいの買ってもらったって言ってたじゃん」
「そうなんだよ! それなのに、持ってかれちまったんだよ! 例のお化け屋敷に!!」
「「ええぇ!!?」」