魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

「行けー、颯斗(はやと)ー!!」

 秋も深まる10月。俺はその日、ゴールポストにシュートを決めていた。
 
 桜川小学校。この日の五時間目の授業は、クラブ活動の時間で、サッカークラブに入っている、俺『威世(いせ) 颯斗(はやと)』は、 二チーム・赤と白に別れて、試合をしていた。
 
 四年生から六年生までの男女が入りまじるその試合は、かなり白熱していて、俺がシュートを決めたと同時に、試合終了のホイッスルがなり響けば、同じチームの生徒たちが、一斉に俺のもとに集まってきた。

「うおっしゃァァ!! やったな、颯斗!」

「すごーい、威世くん! カッコイイ~」

「やっぱ、威世はサッカーの才能あるよ! Jリーグ入れるぜ、Jリーグ!」

「……そ、そうか? ありがとう」

 試合は、8対7で、俺達「白組」の勝利。

 クラスでも、それなりに背丈があって、赤毛の髪が特徴的な俺は、誰もが認めるほどサッカーが上手かった。

 もともと運動神経はよかったけど、サッカーに関しては『威世がいれば必ず勝てる!』なんて言われてるほど。

 だけど、Jリーグなんて、そんな大それたことを言う友人たちを見て、俺は苦笑いを浮かべた。

 サッカーは、好きだし楽しい。
 カッコイイとか、すごいと褒められるのも、もちろん嬉しい。

 だけど、俺には、誰にも言えない秘密があった。それは……

「颯斗~、今日の放課後、またサッカーやろうぜ!」

「……え?」
 
 タオルで汗を拭きながら考え事をしていると、また別の友人に声をかけられた。

 短髪でテンションの高いその男子の名前は、九条(くじょう) 勝也(かつや)──通称・()っちゃん。

 勝っちゃんとは、幼稚園のころから仲が良くて、放課後は、よく一緒に遊んでるんだけど

「あ、ごめん。俺、今日は用事が!」

「えー、颯斗これないのかよ~。じゃぁ、本田は?」

「あ、俺もムリ。サッカーボールがなくなっちまって」

「え、なくなった? なんで? この前、新しいの買ってもらったって言ってたじゃん」

「そうなんだよ! それなのに、持ってかれちまったんだよ! 例のお化け屋敷に!!」

「「ええぇ!!?」」

< 3 / 100 >

この作品をシェア

pagetop