魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
――のだが。
「みんな!! やっぱり颯斗は男の中の男だ!!」
その後、学校につくと、五年二組の俺のクラスの中で、本田君が大声をあげて俺の話をしていた。
え? なにこれ?
「あー威世くんだ!」
「きいたよ。昨日、あのお化け屋敷に一人で挑んだんでしょ!」
入るなり、集まってきたクラスメイトに、俺は困惑する。
お化け屋敷?
あ、確かに入ったけど。
あれ? でも、アレは夢で……
「颯斗! おまえスゲーな! 本田から聞いたぞ! ネコを助けるために、あのお化け屋敷に一人で乗りこんだって!」
「あのお化け屋敷大人でも入れないって言われてるんだぞ! しかも、ネコだけじゃなくて、サッカーボールまで見つけてきてくるなんて、もう勇者じゃん!!」
「「かっこいい~」」
「……えーと」
女子の黄色い声が響いて、俺は、思わず苦笑いをうかべた。
つまり、本田君のうちに、サッカーボールを届けに行ったばかりに、こんなウワサが広まっているわけだ。
まるで英雄のように祭り上げられる俺。
──って、これ可愛いものが好きって、益々いいづらくなってない!?