魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
すると、幹部たちがアランを見て驚いた。
だよな! だって、アランだと思っていた俺とは別に、もう一人アランが現れたんだから!
「ア、アラン様が、なぜそこに!?」
「カールが言ったでしょ。その子は僕じゃないよって。それに、メビウスの結界はもう、役に立たないよ」
「え?」
「だって、ここはもう──僕の結界の中だから」
そういって、クスリと笑ったアランは、開いた本に手をかざした。
すると、空の上に、町をのみこむ程の大きな魔法陣があらわれた。
青い空に浮き上がる、金色の円陣。
それには、見たこともないような文字がたくさん刻まれていく。
『大地の精霊よ。我が血と盟約もと、その命にしたがえ。緑の書・第18番──束縛!』
アランが、呪文のようなものを唱えた瞬間、その魔法陣からから、植物のツタが一斉に伸びてきた。四方八方に、散らばるそのツタは、幹部たちをおいかけ、次々に宙づりにしていく。
それに、あの植物なら、見たことがあった。アイビーっていう名前の、うちの家にもある観葉植物だ!
(ス……スゲー)
目の前の光景にあぜんとする。
ヘビ男もカエル女も、ライオンの姿をした大男も、アランの前にはなす術がなかった。
そして、それから、しばらくして、六人全員が、ひとまとめになると、その前に、アランがトンッと、空の上から降りたった。
まるで、見えない羽でもついてるんじゃないかってくらい、軽やかに。
「さてと! これから、どうしようかな?」
いまだに本は閉じずに、アランが魔族たちを見つめる。
魔族たちは、みんな青い顔をしていた。
まるで、叱られた子供みたいに。
「ア、アラン様! 我らは、貴方様のために言っているのですよ!」
「そうですよ! もう、このようなお人形遊びは、おやめください! あなた様は、いずれ魔界をすべる王となられる、お方! もっと、魔界の王子としての自覚を持ってくださらないと!」
ヘビ男とカエル女が必死に訴えた。
お人形遊びを止めろ──その言葉に、俺は、カールさんとシャルロッテさんに目を向けた。