魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
言えない理由
「ただいまー」
その後、俺は、何ごともなかったかのように、家に帰ってきた。
というか、本当に、なにもなかったのかもしれない。さっき、あれだけ走り回って、かなり怖い思いをしたはずなのに、学校から帰ってきた時間は、いつもと変わらなかった。
多分、あの結界の中にいた間は、時間が止まっていたんだ。
俺は、いつもどおりの時間に家にいて、だけど、一つだけ、いつも通りじゃないことがあって……
「おじゃましまーす」
俺の隣で、アランがにっこりと笑って、挨拶をした。
どっかの有名小学校の制服みたいな、かなりオシャレな服を着たアラン。
さっきまで生えていた角もいつの間にか、なくなっていて、こうして俺の隣にたつ姿は、どこからどうみても、人間だった。
ちなみに、なんで、こんなことになっているのかというと、さっき、アランに
『ちょっとだけ、君の家にいってもいい?』
って、言われたから。
魔界の王子なんて、かなりの危険人物だし、よく知らない人とか、危ない人を家に入れちゃいけないのは分かってる。
だけど、不思議とアランは、悪いやつには見えなくて
「あ、あの、俺の部屋、2階だから」
「うん。お家の人、誰もいないの?」
「お父さんとお母さんは仕事。でも、妹はいると思う」
「そう」
話しながら階段をのぼって、アランと一緒に部屋に入った。
ちなみに、シャルロッテさんとカールさんは、あの後、また人形に戻って、いつの間にか消えていた。
もう、昨日から不思議なことばかりだ。
「あ、あの」
ランドセルを下ろしたあと、俺は、アランに話しかけた。
何を話していいか、よくわかんなかったけど、これだけは、ちゃんと言っておこうとおもった。