魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
◇◆◇
その後、ひととおり話し終えた頃には、もう6時になっていて、アランが帰ることになった。
「じゃぁ、気をつけて帰れよ」
玄関先でアランを見送る。するとアランは
「あはは。気をつけろなんていわなくても、大丈夫だよ。僕のこと誰だと思ってんの?」
「まぁ、そうだよな。(魔王の息子だし)」
「ねぇ、それより、次は、うちの屋敷に遊びに来てよ」
「え? うちのって……まさか、あのお化け屋敷にか!?」
「うん! もうすっかり魔力も回復したから、今朝、もっと強力な結界を張り直したんだ。中も綺麗になってるよ」
「そ、そうなんだ……」
いや、でも、お化け屋敷なのは、かわらないだろ? 大丈夫なのか?
「じゃぁ、またね、ハヤト!」
「え? あ、うん……また」
すると、アランは、にこやかに笑って手を振って、俺はアランを見送ったあと、玄関に入って、鍵をかけた。
「今、ハヤトって……呼ばれた」
なんだか、友達みたいに──
「お兄ちゃん!?」
「うわぁぁ、びっくりした!?」
すると、いきなり夕菜が出てきて、俺は飛び上がった。
「なんだよ、いきなり!」
「なんだよじゃないよ!! お兄ちゃん、さっきの人、誰?!」
「え!?」
ズイと身を乗り出し、顔を近づけてくる夕菜に、かるく狼狽えた。
さっきの人って、もしかして、アラン?
「あの人、すっごくかっこよかった! 綺麗だし優しそうだし、まるでアイドルみたい!」
あー、やっぱり、アランのことか。
確かに、アランはイケメンだ。銀髪だし、目の色は紫だし、しかも王子だし!(魔界のだけど)
ていうか、なんで知ってんだ?……とおもったら、さっき部屋から出た時、夕菜とすれ違ったんだった!
「ねーねー、あの人の名前は!」
「え? 名前は、アランで」
「アランくん。もしかして、お兄ちゃんの友達なの!」
「えっ……そ、そう、俺の友達!」
興味津々に目を輝かせる夕菜に、俺はとっさにそう言ってしまった。
だけど
(ッ……なに言ってるんだろう。アランは俺のこと、友達とは、思ってないかもしれないのに!)
自分の言葉に、なんだか急に恥ずかしくなって、俺は夕菜の質問攻めから逃げるように部屋にもどった。
俺には、友達がたくさんいる。
ゲームの話する友達もいるし、一緒にサッカーする友達もいる。
でも、一番好きな物について、あんなふうに語り合える友達はいなかった。
だから、かもしれない。
魔王の息子相手に、こんなことを思うのは、おかしいのかもしれないけど、いつか本当に、そう、なれたらいいなって思った。
アランと、本当に『友達』になれたらって……