魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
理科室のガイコツ
「珍しいね、威世くんが、図書室にいるなんて」
「え? そうか?」
「うん。いつもは、みんなと校庭で遊んでるから」
あぁ、確かに……そんなことを思っていると、花村さんは、その場にしゃがみこんで、俺が落とした本を拾い始めた。
(手伝ってくれるんだ)
そう思って、俺も一緒に本を拾い始める。
すると、その姿を見て、ふと花村さんと初めて話した時のことを思い出した。
それは四年生のとき。間違って学校に持ってきてしまったララを、廊下で落としてしまったことがあって、それを、花村さんが拾ってくれたことがあった。
『これ、威世くんの?』
『ち、ちげーよ! これは、妹の! 男の俺が、こんな可愛いぬいぐるみ持ってたら、気持ち悪いだろ!』
とっさに、嘘をついた。
もう、笑われたくなかったから。だけど
『そうかな?』
『え?』
『私は、気持ち悪いとはおもわないよ。男の子が、可愛いものをもっていても』
ただ一言。
その一言が、すごく嬉しくて、それからは、何となく、花村さんのことを気にかけるようになった。
「あ……あのさ」
「なに?」
「その……昨日は、ぶつかってゴメンな。みんなは、花村さんが悪いとか言ってたけど、悪いのは、俺だから!」
昨日ぶつかったことを謝れば、花村さんは、少しだけ驚いた顔をした後
「うんん、私の方こそごめんね。でも……ありがとう」
そう言って、小さく笑った。
こうして話してると、全く幽霊って感じはしないんだけどな。でも、もし、原因があるとすれば……
「花村さんさ、前髪あげてみたら?」
「え?」
「ほら、前髪が長いから幽霊とかいわるのかもしれないし、ピンでとめてみるとかさ! ほかの女子たちも、よく可愛いヘアピンつけてたりするし、花村さんも」
「ムリ」
「え!?」