魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
ムリって言われた!
完全に拒否された!
「あ、ごめん……余計なお世話だったな」
「うんん。威世くん、私のために言ってくれてるんでしょ……でも私、おでこに変な形のアザがあって」
「え?」
「本当は、前髪あげたいし、みんなと、もっと仲良くなりたいの。でも、前の学校で、アザのこと笑われてから、おでこ出すのも、みんなの顔見るのも、怖くなっちゃって……」
「………」
花村さんが、前髪を長くして、いつも下を向いている理由が、アザを隠すためなんだって分かって、なんだか胸が痛くなった。
笑われるのは、辛いし悲しい。
それも、女の子が自分の顔を見て、笑われるなんて……
「威世くん、なにか探してたんじゃないの?」
「え? あぁ、えっと、魔界の本」
「魔界? 威世くん、そういうの好きなの?」
「いや、好きっていうか、調べてるだけというか」
「そうなんだ。ちょっと待っててね」
すると花村さんは、別の本棚から何冊か本を持って来てくれた。
「魔界だけの本はないけど、神様とか悪魔とか、魔物がたくさん載ってる本ならあるよ。これに魔界のことも、載ってたとおもう」
「おー、ありがとう!」
やっぱり花村さん、優しいな。
本いっぱい読んでて、けっこう物知りだし
(前髪あげたら、みんなの印象も変わると思ったんだけどな)
「威世くん?」
「あ、ごめん! じゃぁ、これ借り」
「「あー!! 颯斗、みつけたー!」」
「!?」
すると、本を受け取ろうとした俺の耳に数人の男子の声が聞こえてきた。
勝ちゃんを始めとした、仲のいい男子たちだ!
「颯斗! お前、なんで図書室にいるんだよ!」
「え!? なんでって、本を借りに」
「そんなのいいから、スケット頼む! このままじゃ、一組に負ける!」
「はぁ!? またサッカーかよ」
「ちげーよ! 今日は、バスケだ!」
そんなこんなで、無理やりみんなに連れていかれた俺は、けっきょく本を借りることが出来なかった。
だけど、その日の放課後──