魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

「ごめんな、ララ。今すぐ治してやるからな」

 そのあと、ララと一緒に、携帯用の裁縫セットを取り出すと、俺は、学校から持ってきたピンク色の糸を針に通した。

 ピンクの糸は、学校では全く減らない色だけど、家にあったピンク色の糸は全部使い切ってしまった。 

(また買っとかないとなぁ、ピンク……)

 ちなみに糸を買うのは、めっきり百円ショップ。

 手芸屋さんとか、雑貨屋さんとか、可愛いものがいっぱいあるお店にも行ってみたいけど、残念ながら、男一人で入る勇気はない。

 これが、おかしいのか、おかしくないのか、自分ではよく分からなかった。

 心が女の子なら、自分でも納得できたかもしれないけど、男なのに可愛いものが好きって、やっぱりおかしいのかな? 

 そう思うと、誰にも相談できなくて、こうして隠れて、好きな裁縫を続ける日々をすごしてる。

 ちなみに、俺が今日、サッカーの誘いを断ったのも、ララの服を治してあげたかったから。

 ララは、昨日うちの飼い猫のミーにひっかかれて、洋服がやぶれてしまって、すぐに直してあげたかったけど、糸がなくて断念。

「ミーも、もう少し、優しく遊んでくれたらいいのに……」

 軽くグチりながら、ララのワンピースを脱がすと、俺は、破れた場所を丁寧に縫っていく。

 裁縫をはじめたころは、ボタンつけしかできなかったけど、今では、並縫い、まつり縫い、本返し縫いなど色々マスターして、洋服一着、全部自分で作れるようになった。

 ここだけの話、ララに似合う服を自分でデザインしたり、アレンジしたりするのは、すごく楽しい。

 自分のお小遣いの中で、布とか糸とか買うから、色々と限界はあるけど、こうして、もくもくと裁縫をしていると、更に実感する。

 やっぱり俺は、裁縫が好きなんだって……
  
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