魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
外は、夕日の色に染まっていて、人の気配が全くない。
花村さんと逃げながら、人を探したけど、校庭にも、教室にも、職員室にも、誰もいなかった。
きっと、昨日と同じ、魔族の結界の中に閉じ込められたんだと思った。
(でも、なんで、花村さんまで!)
隣を見れば、花村さんは、ひどくおびえていた。
そうだよな。だって、ガイコツにおいかけられてるんだから。
(狙われてるの、俺だし。俺のそばにいない方が)
昨日の幹部たちは、今、冥界でリフレッシュ中だから、俺がアランじゃないってって、まだ魔王に伝わってないのかもしれない。
俺と一緒だと、きっと狙われる。
だけど、涙目になって震えている花村さんを見ると、このまま一人きりにはしたくない。
ガタガタガタガタガタ!!!
「ッ!?」
すると、教室の外で物音がした。
扉をガタガタと揺らす音と、骨がカクカク言う音。
すると、バタン!と、ひときわ大きな音を立てて扉が壊されると、そこから、ガイコツがぬっと顔だけ覗かせた。
「きゃッ!」
「うわっ!?」
不気味なガイコツに、思わず声をあげると、俺は、とっさに怖がる花村さんを後ろに隠した。
何としても、花村さんは守らないと。だけど、あのガイコツ、どうやって動いてるんだ?
魔族がのりうつってるとか?
色々考えたけど、よく分からない。
そんなよく分からない状況で、ヘタに動いたら、掴まって魔界に連れていかれる!
(ッ……どうしよう)
だけど、その時
──ハヤト。
と、どこから声がした。
俺の名前を呼ぶ誰かの声。