魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

 アランのやつ、なにが騎士(ナイト)だ!

 うちのララ、めちゃくちゃ小さいんだけど!? かなり、弱そうなんだけど!?

 こんな小さくで可愛い女の子に、あんなおっかないガイコツと戦えと!?

 お前、やっぱ魔王の息子だわ!!

「威世くん、その子、誰!?」

 すると、俺の横で、花村さんが驚いた様子で、そう言った。そりゃ、いきなり人形が人間に変わったんだし、驚くよな!?

 ていうか、これ、どう説明しよう。

「ララはね、ハヤトのぬいぐるみだよ~」

「え? 威世くんの?」

「わーわーわー!! 花村さん、聞き流していいから!! つーか、ララ! お前、元に戻れ、これじゃ走りにくい!」

「もどり方わからない!」

「そっかぁ~、分かった!!」

 気がつけば、俺はララと花村さん、二人を同時に守ることになっていた。しかも、ガイコツは、いまだにカタカタと骨を鳴らしながら追いかけてくる!

(いつまでも、逃げてるままじゃダメだ!)

 花村さんの体力も限界だろうし、ララを抱えたまま逃げ切るなんて、多分ムリ!

 どうする! どうする!?
 すると、その時、またララが声を発した。

「ハヤト、あのガイコツ死んでる」

「死んでる!? そりゃ、そうだろーよ!」

 ガイコツだしね!
 しかも、標本だしね!

「違うの、魂が入ってないの。あと、音がする」

「音?」

「うん、カタカタいってる」

 ララが長い耳をピクピク動かしながら、目を閉じた。

 カタカタ? それって、あのガイコツの音じゃないのか?

「ハヤト! 前!」
「!?」

 前──そういわれて、目を凝らす。

 だけど、前には何もない。
 あるのは一直線に続く廊下だけ。だけど

「花村さん、ふせて!!」

 とっさに声をかけて、花村さんと一緒に廊下の床にしゃがみ込んだ。

 ララの言葉を信じて、できるだけ体勢をひくくして、うずくまる。

 すると、それから数秒おくれて、俺たちの頭上を何かが、勢いよく通り過ぎた。

 強い風みたいな、見えない何か。

 ──ガシャァァァン!

 すると、それは、俺たちを追いかけていたガイコツにあたって、そのガイコツが、バラバラにはじけとんだ。

 まるでボーリングのピンみたいに、あちこちに散らばる骨、骨、骨。

 そして、そこに、また別のガイコツが現れた。黒いマントをはおった、ガイコツが。
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