魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
「あぁぁぁぁ、しまったぁぁぁ! 私のガイコツがぁぁぁぁ!!」
バラバラになったガイコツをみて、ひどくなげき悲しむガイコツその2。
「くッ、私の術を見破るとは、さすがはアラン様!」
キッと俺を睨む見つけてきた、ガイコツその2は、やっぱり俺のことを、アランだと思ってるみたいだった。
それに、よく見れば、その側には大きな虫取りアミみたいなものが落ちていて、あれで、俺たちを捕まえるつもりだったんだ。
(あっぶねー)
全く見えなかった。
ララが音で気づいてくれなきゃ、今ごろ捕まってた。
たぶん、理科室のガイコツは、このガイコツが操ってて、挟み込んで捕まえようとしたところを、俺たちがよけたから、そのままぶつかったんだ。
「威世くん……」
すると、俺の横にいた花村さんが、震えながら俺の服の袖を掴んだ。
そうだよな、怖いよな。だけど、そのガイコツ2が、今度は花村さんに向かって叫ぶ!
「こら小娘! 気安く触るな! その方をどなただと思っておるのだ! 魔界の王子にして、魔王様のご子息、アラン・ヴィクトール様であるぞ!!」
「え、魔界の王子!?」
「いや、違うから! 信じないで、花村さん!」
信じたのか、パッと手を離した花村さん。魔界の王子とか、そんな変な誤解クラスメイトにされたくない!
「それより、アラン様! 今すぐ魔界にお戻りください! 魔王様が心配しておられます!」
「え?」
だけど、その後、ガイコツ2が、あたふたとそう言って、俺は驚いた。
魔王が、アランのことを心配してる?
アランの大事な人形たちを、壊そうとしておいて?
でも、ちょっと意外だった。
子供が家出したら、普通の親なら心配するけど、魔王も、やっぱり親なのかな?
いや、魔王だし、普通の親ではないんだけど。
「もう、ハヤトは、アランじゃないもん! まちがえないで!!」
「!?」
だけど、そんな俺の耳に、今度はララの声が飛び込んできた。
いつのまにか俺の腕からいなくなっていたララは、なんとガイコツの前で説教を始めていた。
「ハヤトを魔界に連れて行こうとするなんて、ララ、怒ってるんだから!」
「ふはははは、なんだ、この子供は! もしやアラン様の人形なのか!? 怒ってる!? ひゃーはっは! 怒れ怒れ、いくら怒ろうか、こんなちびっこ相手に、我が負けるわけ」
──ガコン!
瞬間、何かが外れる音がした。
蹴った。ララが蹴った。
何をって? ガイコツの──頭を!!
「うわぁぁぁぁ、頭ぁぁぁぁ、私の頭があぁぁあぁぁぁぁぁ」
「もう、なんて意地悪なガイコツさん! あっちいって!」
プンプンと頬を膨らませるララ。
そして、けられたガイコツの頭は、廊下の窓からキラーンと飛びだして、目の前で身体だけになったガイコツは、そのあとピタリと動かなくなった。