魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

(あの魔族、頭が外れたら動けなくなるんだ)

 あっという間のできごとに俺はひょうしぬけした。……というか、魔族って、ちょっとアホなのか?

「ハヤト!」
「うわ!」

 すると、ララが、ぴょんと俺に抱きついてきた。

 魔族をやっつけて嬉しそうに笑うララ。それをみて、俺はホッとして、ララの頭を撫でてやる。

「ありがとう、ララ。お前、強いんだな!」

「えへへ! ララ、サッカーうまい?」

「あぁ、うまかった。でも、人の頭は蹴っちゃダメだぞ」

 ララがいてくれたおかげで、助かった。
 こんな小さいのに、思ったより頼もしい。

 だけど、ララと話していると、今度は花村さんが声をかけてきた。

「威世くん。その子もしかして、前に威世くんが、おとした子?」

「あ……」

  
 廊下にすわり込んだまま、二人目があって、俺は、バツが悪そうに顔をそむけた。

 あの時のこと、まだ覚えてたんだ。

 どうしよう。
 話すか、話さないか迷う。

 でも……

「……ごめん。あの時は、妹のだって言ったけど、本当は、俺のぬいぐるみなんだ。俺、実は可愛いものが大好きで、でも、男が可愛いもの好きとか、おかしいし、カッコ悪いし、笑われるのが嫌で……それで」

「…………」

 黙り込んだ花村さんに、心がどんより重くなる。でも、今さら隠してもしょうがない。

「嘘ついて、ごめん! 俺、クラスでカッコイイとか、男らしいとか言われてたりするけど、本当は、全然そんなことなくて! 本当に、ごめん!」

「え!? うんん、謝らなくていいよ! それに、私は女の子だけど、男の子の本も読むし、好きな色は青だし、サッカーだって大好きで、よく弟と遊んでるの! だから、威世くんは、おかしくないよ! それに……さっきも……ずっと私のことを守ってくれたし」

「え?」

「その……ガイコツから、私とララちゃんを、守ろうとしてる威世くんは、すごくカッコよかったよ……だから、可愛いものが好きでも……威世くんは、カッコイイと……思います」

「……っ」

 恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしていった花村さんに、なんだか、こっちまで恥ずかしくなった。

 なんだろう。
 心の中が、ふわふわする。

「あれー、倒しちゃたんだ!」
「!?」

 だけど、そこに、突然アランの声がひびいた。
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