魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
第4章 世界を変える方法
誕生日にほしいもの
その後は、念のため花村さんを保健室に連れて行って、俺はそのまま家に帰った。
そして、それから一週間。
俺は家族と一緒に夕食をとりながら、ため息ばかりついていた。
目の前には、俺の大好きなハンバーグとポテトサラダがあるのに、どうにも食欲がでない。
アランと間違えられて、魔族に三日連続で追いかけられたけど、なぜか、あれからぱったり来なくなって、今はすごく平和な日常をすごしてる。それなのに……
「はぁ……」
「颯斗、最近、元気ないけど大丈夫?」
ため息ばっかりついていたからか、俺を心配してお母さんが声をかけてきた。
すると、お父さんと夕菜も、俺の方に目を向けてきて……あ、ダメだ、ダメだ! めちゃくちゃ、心配してる!
「だ、大丈夫! ほら、もうすぐテストだから」
「もう、お友達と遊ぶのもいいけど、ちゃんと勉強もしなさいよ」
「分かってるよ!」
「それはそうと颯斗、もうすぐ誕生日だよな? 欲しいものは決まったのか?」
すると、今度はお父さんがそう言って、俺はカレンダーを見つめた。
来月11月21日は、俺の誕生日。
だから、だいたい10月頭には、こうして、欲しいものを聞かれるんだけど
「えっと、まだ決まってない」
「ねーお兄ちゃん! スマホにしようよ、スマホ!」
「こら、夕菜! スマホはまだ早いわ」
「えー、お兄ちゃんが買ってもらわなきゃ、私は更に遅くなるじゃん!」
誕生日プレゼントで、夕菜とお母さんが、もめ始めた。そう言えば、夕菜、前からスマホがほしいっていってたっけ?
俺も、欲しくないわけじゃないけど、家族共有で使ってるタブレットはあるし、頼んだところでダメなのは分かってるから、今は諦めてる。
まぁ、中学生くらいになったらお願いしてみようとは思ってるけど?
「颯斗、欲しいものが決まったら早めに教えてね」
「あ、うん」
お母さんにそう言われて、ふと、これまでの誕生日を思い出した。
お父さんとお母さんは、いつも俺が頼んだものを用意してくれる。だけどそれは、いつも二番目に欲しいものだった。
一番欲しいものは、言えなかったから。
(今年も、言えないのかな?)
なんで俺、嘘ばっかりついているんだろう。
自分の好きなものも、好きなことも、欲しいものですら、全部『秘密』にしてる。
だから、正直、アランが羨ましかった。
自分の好きなものを、素直に好きだっていえるアランが。
誰に反対されても、自分に自信を持ってるアランのことを、カッコイイなって思って、俺も、いつか、あんな風に自分に自信を持つるようになれたらいいなって思った。
でも……
(友達になるなんて、やっぱり無理だよな)
アランは魔界の王子で、魔王の息子で、人間の俺と友達になるなんて、ありえない。
だから、記憶を消されたら、そこで、さよなら。そんなの良く考えれば、わかったはずなのに
「はぁ……」
だけど、思った以上の落ち込んでるらしく、その後も、ずっとため息が止まらなくて、俺は早めに食事をすませると、すぐさま部屋に戻った。