魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
王子様とお買い物
それから、しばらく歩いて、俺達は、校区内にある商店街にやってきた。
桜川商店街──ここには、様々なお店が並んでる。
八百屋さんとか、お肉屋さんだけじゃなくて、コンビニに、駄菓子屋さんに、喫茶店に、たこ焼き屋さん。そして、もちろん手芸屋さんも!
だけど……
「わぉ、あの子、可愛いー」
「外国の子かしら? モデルさんみたーい」
商店街を歩きながら、人々がひそひそと話をする。もちろん、注目の的になってるのは、アラン。
アランは、とにかく目立った。
髪の色が銀色ってだけでも目立つけど、その上、かなりの美少年だから、みんなして、アランのこと見ていた。
(すっげー、落ち着かない)
「ねーハヤト、これ可愛いよー」
だけど、そんな視線には、どこ吹く風って感じで、アランは全く気にしてなかった。
それどころか、雑貨屋さんの店先に出ていたクマのキーホルダーを見ながら、ニコニコしてる。
まぁ、王子だし、人に見られるのは慣れてるのかな?
「ハヤト、あのお店はなに?」
「えっと、アレはクレープ屋さん」
「クレープ?」
「あれ、知らない? って、しるわけないか? 中にクリームとか果物をいれて、薄い生地で巻いた甘いデザートってうか」
「へーおいしそう! 後で行ってみようよ、あのお店、可愛いし!」
「んん!?」
あとで行ってみる!?
クレープ屋さんに!?
「いやいやいや、アラン、アレをよく見ろ! 女子しか並んでねーじゃねーか!!」
「え? あー確かに……もしかして、男子は食べちゃいけないものなの?」
「え、そういうわけじゃ……ないけど……っ」
うん、別に男子が禁止されているわけじゃない。食べものは、誰が何たべても自由だ。
「でも……こう、恥ずかしだろ……俺達、男なんだし」
「…………」
ぽつりぽつりと呟くと、アランはそれから、しばらくして
「そっか。男がクレープを食べるのは、恥ずかしいことなんだね。覚えておくよ」
「え、あ……っ」
ニッコリ笑って、そういったアランに、俺はなんだか申し訳ない気持ちになった。
なんだろう、心が痛い。
違う。
本当は、恥ずかしいことじゃない。
それなのに……