魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

 その瞬間、俺は目を見開いた。

 ミーは、8歳の三毛猫で、俺たちが子供の頃から、ずっと一緒にいる猫なんだけど

「いなくなったって、なんで!?」

「リビングの窓をあけたら、いきなり外にとび出していちゃって……どうしよう、お兄ちゃんっ」

 ひくひくと泣く夕菜を見て、ふと昔のことを思い出した。

 実は、俺たちの家には、もう一匹猫がいた。三毛猫のミーと一緒に産まれた、虎猫のロー。

 だけど、そのローは、家から脱走した時に、車に引かれて死んでしまった。

 だから、その時のことを思い出して、夕菜は不安で仕方ないのかもしれない。

「うぇぇん、お兄ちゃぁぁん」

「だ、大丈夫だって! 必ず見つけて帰ってくるから!」

 夕菜の肩を掴んで、心配するなと呼びかけた。

 だけど、室内飼いのミーは、ローと同じように、外に出たことは、ほとんどなくて……

 ──こうしちゃいられない。

 俺は、すぐさま部屋から出ると、ミーを探すため、家から飛び出した。
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