魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
いきなり物騒なことを言い出したアランに、思わずジュース落っことしそうになった。
「魔物って、どこにそんなもんが……っ」
「どこにだっているよ。さっきの商店街にも、家にも、ハヤトの通う学校にも、どこにでもいて、誰にも見えなくて、でも、確実に誰かの心を弱られていく。その魔物の名前は」
『空気』――アランは、そういった。
男は男らしく。
女は女らしく。
子供は子供らしく。
親は親らしく。
そして、それが当たり前だという『普通という空気』に、苦しんでる人たちがいる。
きっと自分達は、その中の一人だって。
「普通の人って、たくさんいるでしょう。だから、みんな普通でいたがるんだよ。一人は怖いから。群れてる方が安心する。でも、それってさ、その普通から外れた人たちを、攻撃する人たちがいるからなんだ。まるで悪いことしてるみたいに、仲間外れにしちゃう人達。ハヤトだって、そうなんじゃない?」
「え?」
「『普通』から外れて、一人になっちゃうのが怖いから、可愛いものが好きって言えないんでしょう?」
「……っ」