魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
世界が変わる時
その言葉は、深く深く突き刺さった。
耳に、心に。
ずっと、秘密してきた。
でも、それは、あの日みんなにバカにされて──怖くなったから。
まるで、おかしい人みたいに、ダメな人みたいに否定されて、普通にしていないと、友達がいなくなると、おもってしまったから。
「あれ、黙っちゃった。もしかして図星だった」
「っ……うるせー」
「はは、ねぇハヤト、一つだけ教えといてあげる」
すると、まるで内緒話でもするようにアランと距離が近づいて、その紫色の瞳と目が合う。
「空気って、とても厄介な魔物だけど、空気はね──変えられるんだよ」
「……え?」
「嫌な空気は、変えてしまえばいいんだよ。いつの世も、世界を変えるのは、たった一人の勇気から始まるんだ。誰かが、ほんの少しだけ勇気を出して、空気を変えるだけで、世界はあっという間に変わったりするんだ。──というわけで! 今から、クレープを食べに行こう!」
「へ?」
…………クレープ??
「ちょ、なんで、いきなり話が変わった!?」
「変わってないよ」
「変わっただろ!」
「あはは。ねぇ、ハヤト! 僕はね、人も魔族も、もっと自由に生きるべきだとおもうんだ。男とか女とか、恥ずかしいとか、恥ずかしくないとか、そんなの関係ないよ。だから”男がクレープ食べるのは恥ずかしい"なんていう空気は、僕たちが壊しにいっちゃおう!」
「え!?」
そう言うと、アランは俺の腕をとって、ブランコから立ち上がらせた。
飲み終わったジュースの缶を二つ一緒にゴミ箱に入れると、アランは俺の手を引いて、また商店街の方に歩き出す。
「ちょ、ホントに行くきかよ!?」
「うん! あ、それともクレープ嫌いだった?」
「いや、好き……だけど」
「じゃぁ、問題ないね! せっかくだし、とびっきり甘くて、かわいいクレープ頼んじゃおう!」
笑って、楽しそうに進んでいくアラン連れられて、俺は、またさっきの商店街にやってきた。
夕方になって、クレープ屋さんの行列は、昼間見た時より長くなっていた。
だけど、そこにいるのは、見事に女の人ばかりだった。
一人だけ男の人もいたけど、彼女と一緒に並んでる感じで、男だけで並んでる人なんて一人もいない。