魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
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「えぇ、ハーツが壊れたら、体ごと消滅しちゃうの!?」
11月に入った、ある日の朝。
俺は通学路の途中で、叫んでいた。
学校に行く途中、たまたま見回り中のカールさんにあっただけど、何気なしにハーツのことを聞いたら、びっくりする返事が返ってきたから!
「そうだよ。人間だって、心臓が止まったら死んでしまうだろ。それと同じさ。本来、人形は、その形がなくならない限り、魂だけで永遠に生き続けるものなんだ。何年も、何百年もね。だけど、その魂を、魔法の力でハーツに変えることで、自由に動ける体と実体化できる力を手にできる。でも、そのハーツが壊れた時は、体ごと消滅して、二度と元には戻らない。それが”代償”ってやつだよ」
「代償……」
「そう。だから、ララのことも気をつけてあげて」
いつもの爽やかな笑顔で、カールさんは、そう言った。
黒のスボンに、Vネックのシャツ。細かいラインが入った七分丈のジャケット着ているカールさんの服は、先日、アランがデザインして作り上げたもの。
この前、一緒に買い物をしたあとから、俺たちはよくアランの家で、一緒に裁縫をするようになった。
魔法でなんでも出来ちゃうアランだけど、裁縫は魔法の力は一切使わず、一針一針、丁寧に自分で縫うんだ。
アランの魔法は、魔界の地下で見つけた古い魔導書の他にも、自分で新しく作った魔法もあるみたいで、この前、俺にくれた銀色の腕輪も、アランがつくった魔法道具の一つ。
だから、洋服だって魔法で作ろうと想えば作れちゃうみたいだけど、アランは「それじゃ、つまらない」といって、人形達の服は、自分で一から作り上げる。
むしろ、それが楽しいと笑っていた。
ちなみに、俺も、あれからララの服を二着作り上げた。
ララが言っていた、星のマークと帽子がセットになった服。帽子を作ったのは初めてだったけど、アランと職人たちが丁寧に教えてくれたから、初めての俺でも上手に出来た。
だけど、こうして、俺たちが考えた服を着ている3人は、全部魔法のおかげで動いてるんだって、あらためて実感した。
カールさんも、シャルロッテさんも、ララも、アランに命を与えられる時に、自分で、それを選択したんだ。
例え、ハーツが壊れて消滅したとしても、俺やアランを守りたいからって──
「でも、今、カールさんたち、そのハーツを魔王に狙われてるんでしょ?」