魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
俺が心配そうに話しかけると、カールさんは、少し難しい顔をして答えた。
「そうだね。魔界から逃げる時、魔王様に胸を一突きにされた時は、もうダメかと思ったよ」
「え!? あの傷、魔王にやられたの!?」
「あぁ、運よくハーツは無事だったけどね。でも、あの時は、シャルロッテも怪我をして人形に戻ってしまっていたし、アラン様も、魔王様との戦いで魔力を使い果たしてしまったから、ハヤトくんがいてくれて助かった」
「え! でも俺は、ボールけるくらいしか出来なかったし……でも、魔王ってそんなに強いんだ」
「そうだね。あのお方は、とても強く恐ろしい方だよ。さすがのアラン様でも歯が立たない」
「アランでも……」
背筋がゾクッとした。あんなに魔法をたくさん使えるアランでも、魔王には勝てないなんて
「ごめん、怖がらせてしまったね。でも、魔王様が、魔界から出てくることはないから、人間界にいれば安全だよ。それに、他の魔族たちには、負ける気がしないしね」
「そっか、よかった」
「颯斗ー!」
すると、学校が近くなってきたからか、ちょうど登校中のクラスメイト達に声をかけられた。
「おはよう、颯斗!」
「おはよー」
集まって来るみんなに挨拶をすると、カールさんは「じゃぁ、学校楽しんでおいで」といって、みんなと入れ代わりに去っていった。
すると、そんなカールさんをみて、みんなが興味津々に問いかけてきた。
「威世くん、あのカッコイイお兄さん、誰!?」
「めちゃくちゃ、イケメンじゃん!」
「あ、やっぱり、そう思うよな!? そうなんだよ、カールさん、めちゃくちゃカッコイイんだよ! 強いし、優しいし、頼りになるし! もう完璧!」
「え!? 颯斗が言うほどって、よっぽどカッコイイんだな!?」
いや、俺が言うほどって、ちょっと意味が分からないけど、でも、本当にカールさんはカッコイイし、憧れる! もちろん、シャルロッテさんとアランも!
だけど、そんな3人もでも、魔王にはかなわないんだな。
(前に、ガイコツが『魔王様が心配してる』って言ってたけど、あれは嘘だったのかな?)
子供のことを心配していたら、普通はそんなことしない。
ハーツを壊されたら、二人は消滅する。
そうなったら、アランは、どうなるんだ?
(アランたちが、ずっと人間界にいられたらいいのに……)
一ヶ月、一緒にいて思った。
あの三人は、ただの人形でも、その人形を従えてる王子様でもなくて、普通の家族みたいにあったかい。
だからこそ、そんな三人が引き裂かれるなんて、絶対に嫌だ!
(俺も、助けてもらってばかりじゃなくて、強くならなきゃ)
次は、友達を助けられるように──