魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

猫と人形


 それから俺は、近所をひたすら走り回って、いつのまにか四丁目のあまりまできていた。

 秋の夕方は、普段なら少し肌寒いけど、上着を着ているからか、走ったからか逆に熱すぎるくらいだった。

(どうしよう。もし、ミーに何かあったりしたら)

 額ににじんだ汗を、ゆっくりとぬぐう。昔のことがあるからか、つい良くないことばかり考えてしまう。

 でも、もう大事な家族を失いたくない。俺は、そう思うと、更に走る速度を早めた。

「ミー!!」

 大声を上げて、ミーを呼ぶ。

 だけど、それからしばらく走って、路地を曲がった先で、目の前に、大きな屋敷が飛び込んできた。

 クラブ活動の時に、本田くんが話していた『お化け屋敷』だ。

(うわ……変なところに、きちまった)

 荒れはてた洋館は、シンと静まり返っていて、人の気配はまったくない。

 さすが、お化け屋敷!

 その不気味な空気を感じとって、軽く腰が引けた。

「みゃ~」

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