甘く落ちて、溶けるまで
ちょうど1時限目は担任…って言うのそろそろ飽きたから、一応名前言っとくよ。
田中 美代子先生ね。
通称美代ちゃんが1時限目の国語の先生だったから、続けて授業が始まった。
さて、教科書とノートを開こう…と思ったけど。
よく良く考えれば、椿くん教科書とか持ってないじゃん…ってことに気がついた。
たぶん……いや、これって…。
「あ、有栖さん。椿くんに教科書見せてあげてね」
うん、知ってた。
誰もが想像していた流れがやってきて、もうため息すら出てこない。
だからといって、見せないなんて意地悪はできるわけもなく。
「………えっと、これでいい?」
仕方なしに机を近づけて、隣からも見やすいように教科書を広げた。
「…うん、ありがとう」
そしたら、思いのほか素直な言葉が返ってきてびっくり。