甘く落ちて、溶けるまで

「う、ううん…」



…ま、わかるわけないよね。



今はあの日とは全くの別人である私。



分厚い眼鏡にストンと落ちた真っ黒な髪の毛。



膝丈スカートはいかにも優等生を演出している。



一応先生たちからの評判もいいから、逆ナンなんてしているとバレた日にはどうなるかわかったものじゃない。



これでよかったはず……なのに。



…なんで、「ちょっと残念」とか思っちゃてるんだろ。



なんだかモヤモヤしたものが膨れ上がって、しばらく授業に集中することができなかった。



***



───キーンコーンカーンコーン



「…はい、今日はここまで」



4限目が終わり、美代ちゃんじゃない先生が教室から出ていった途端。



「椿くんどこから来たの?」



「良かったら一緒にお昼食べない?」



「校内案内してあげるよ…!」
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