甘く落ちて、溶けるまで
可愛いって言わせたい
「有栖さん、おはよう」
「……おはようございます」
あちこちから飛んでくる鋭い視線。
「敬語じゃなくてもいいのに。ほら、俺らタメでしょ?」
朝から浴びる嫌な注目ほど、居心地が悪いものはない。
「気にしないでいいと思いますけど」
「そんなこと言わないでよ。せっかく隣の席になったんだし…ね?」
…ほんとに性格悪いな。
周りの目も気にせず、私だけに話しかけてくる椿くん。
「なんで有栖さんだけ?」っていう女子の視線が、嫌というほど突き刺さる。
そんなに椿くんと話したいなら、自分から声をかければいいでしょ!?
行動も起こそうとしないくせに嫉妬だけは一丁前にするとか、ほんと呆れるんだけど。
椿くんは椿くんで、私を困らせようとしているのが見え見え。
女子トラブルがどんなに面倒くさいものなのか、絶対わかってるくせに。