甘く落ちて、溶けるまで
言わずもがな、椿くんのことだ。
女子たちは練習をしているフリをしながら、遠目に椿くんを眺めてはキャッキャしている。
しかも、体育は2クラス合同だからその数は半分を超えている。
…みんな、あの爽やかさに騙されすぎ。
一人で黙々とシュートを決める私のことなど、誰も見やしない。
呆れてため息も出ないわ。
ま、いいけどね。
所詮は遠巻きに見ることしか出来ないあなたたちとは違う。
私は、この時間だって椿くんに近寄る権限を持っているんだから。
「じゃ、女子はシュート練終わったら次はペア組んでパス練ね!」
「「「はぁ〜い」」」
先生の声にやる気のない返事をする女子たちは、ブツブツ文句を言いながら友達と集まりだした。
ちなみに、私を誘おうとする人は一人もいない。