甘く落ちて、溶けるまで

女子のひそひそ声が、まぁ嫌でも耳に入ること。



聞こえてないと思ってるんだろうけど、バッチリ聞こえちゃってるからね?



今までの私だったらこうなることを予測して、椿くんを無視しようとしてたんだろう。



でも、どっちにしたって同じことでしょ?



断ったら断ったで、「椿くんに誘われたのに断るとか何様?」とかって言うのは目に見えてんの。



だったら、この機会を思う存分使って椿くんを負かした方がよくない?



…ってことで。



「有栖さんって、意外にスポーツできるんだね」



「私が出来ないと思って、バカにしようとしてたんでしょ。椿くんの思い通りになんて、絶対なってやんないんだから」



「はは、そんなこと思ってないよ?」



みんながゆるーくパス練をしている脇で、私たちは目にも止まらぬ速さでパスをし合っていた。
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