甘く落ちて、溶けるまで
「ははっ、瑠奈ちゃんの顔真っ赤っかでりんごみたい。写真撮ったげようか?」
「っ〜!!」
たかが下の名前で呼ばれただけ。
それだけで、なんでこんな胸が痛いの…?
椿くんに呼ばれる度に、息が詰まりそうになって。
「…瑠奈ちゃんって、ギャップの塊かも」
「な、なにそれっ…。意味わかんない」
途端に目を合わせられなくなる。
「…目、合わないね。どうして?」
「っ、知らない。椿くんのせいじゃん」
「まーた俺のせい?瑠奈ちゃんの反応が、いちいち可愛いのがいけないんでしょ」
「っ…!!」
こんなの、知らない。
「あ、もっと赤くなった。…かーわい」
「っ…ばっかじゃないの?」
こんな私、知らないよ。
「…私、勉強するから。もう一切話しかけてこないで」
どんどん自分が自分じゃなくなっていくこの感覚が怖くなってきて、ペンケースからシャーペンを取り出す。