甘く落ちて、溶けるまで

「ん、わかった。俺も頑張る」



すると、案外すんなり頷いてくれた。



でも、心の中ではもやもや曇る。



…なんだ、やっぱりからかってただけなんだ。



そう思ったところで、ふと気づいた。



「……っえ?」



「ん?どーしたの?」



「あ、いや…なんでもない」



…“なんだ”って、なに?



不思議そうに見てくる椿くんから視線を落として、問題集に目を向ける。



だけど、そんことをしたって無理らしい。



椿くんに“可愛い”と言われたことが、単なるからかいのそれだったのだと思ったとき。



私は、普通に“ガッカリした”。




別に、今椿くんを打ち負かそうとしてたわけじゃないのに。



素で私を可愛いと思ってくれたのだと、そう勘違いして1人で嬉しくなって…。



…馬鹿なのはどっちよ。



こんな腹黒男に、もしかしたら惹かれているのかもしれない。
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