甘く落ちて、溶けるまで

自分にそう言い聞かせて、当たりをキョロキョロ見渡す。



「カッコイイ人いないかな〜…って──」



私の目が、ベンチに腰掛けたとある男性に釘付けになった。



目を奪われる…とは、まさにこの事。



……なに、あの人。



長くてスラッとした手足。



大きな二重に優しそうな目じり。



唇は薄く、鼻筋が通っていておまけに高い。



綺麗で艶のある茶髪がサラサラと揺れている。



…これはもう、行くしかない。



前髪を手ぐしで整えてから、彼の方向へ足を動かした。



「ねぇねぇ、そこのおにーさんっ。今暇でしょ?私と一緒に遊びに行こ♡」



スマホから視線を上げて私を見つめたイケメンすぎる彼に、研究し尽くした笑顔を向けて。



可愛い声と共にこてんと首を傾げる。



この笑顔に落ちない男はいない。



そう確信しているからこその自信。
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