甘く落ちて、溶けるまで
「椿くんは有栖さんの隣でいいかしら?」
私個人の事情など知らない担任は、軽々しくそう言った。
む、無理無理…!!絶対に嫌…!!!
「椿くんはまだまだ慣れないことばかりだと思うから…有栖さん、色々教えてあげてね」
そんな心の叫びが届く訳もなく、担任に大変なことを頼まれてしまった。
な、なんてこと頼んでくれてんの…!?
教えることなんてそんなにあるわけないじゃん!
一人で慌てているうちに、ゆっくりと椿くんが席に近づいてくる。
そして、静かに席に着いた。
…あれ、バレてない……?
何も言われないから、とりあえず一安心。
───キーンコーンカーンコーン
そこにタイミングがいいのか悪いのか、授業開始前の予鈴が鳴り響く。
「あら、もうこんな時間。それでは前回の続きから始めます」