再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない～運命なんて信じないはずでした～

子供を育てながらフルタイムで働くのは簡単なことではない。
どんなに気を付けていても子供は病気になるし、そうなれば自分が休んで看病するしかなくなる。
育児に理解のある金田法律事務所に勤めていたために、文句を言われるようなことは今までもなかった。
みんな気にしなくてもいいからと言ってくれるけれど、私が休めば周りの人の負担は増える。それがわかるから、少し無理してでも保育園に行かせようとする。
そんな様子を見て「子供がかわいそうに」と言ってくる人もいるし、「働いている以上当然だ」と言う人もいる。
子育てを巡る個々の見解は千差万別。
たとえ周りからどういわれても、自分の信念をもって決めていくしかないんだ。

「あと1０分で終わりそうか？」
デスクに向かって黙々とパソコンを叩いている尊人さんが、私に声をかけてきた。

「ええ、終わります」

メールのチェックももう少しで終わる。
幸い急ぎの案件もなくて、すぐに対応しなければならない仕事もなさそうだ。
後は尊人さんのスケジュールを・・・あれ？

「俺の今日のスケジュールはキャンセルした」
「それは・・・」
一体どういう意味だろう。

「ほら、仕事が片付いたら保育園に迎えに行って、それから病院へも送るから、急げ」
「え、ちょと、待ってください」

すでに席を立ち上着に袖を通そうとしている尊人さんの前に、私は駆け寄った。