再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
しばらくして、私と凛人は診察室に呼ばれた。

「どうやら今回は風邪をひいたようだね。少し熱が高いから薬を出しておきます。夏の疲れがでたのかもしれないから、一日二日は家で休ませてあげてください」
「はい」

夏になると熱くなるし保育園でプールもあるため、凛人の髪はかなり短くしている、
その方が楽だし本人も喜ぶのでそうしているのだけれど、おかげで今はクリクリとうねるくせ毛が目立つことはない。
だから尊人さんも、凛人の見た目を気にすることは無かったんだろうと思う。
でも、普段から凛人を見ている健斗先生はそうもいかないようだ。
さっきからすごく意味ありげな視線を向けられている。

「彼のこと、徹は知っているの?」
「え、なぜ、ですか?」
「だって、どう見ても親子じゃない」
「・・・」
私は絶句した。

健斗先生は徹とも親しくしているから、当然私がシングルマザーだということも知っている。
それでもこうもはっきりと言われると、衝撃は隠せない。
先日駅で尊人さんと遭遇し徹に凛人のお迎えを頼んだ時、徹と尊人さんは顔を合わせている。
その後徹は何か言いたそうにしたけれど、「今は何も言わないで」と私が言ってしまったために何も聞いてこなかった。
そういうところが徹の優しさなのだろう。

「小児科医として言わせてもらうと、子供はたくさんの愛情に包まれて育つ環境がベストだと思う。それが血族であろうと他人であろうと、愛されて育った子は心豊かに育つんだよ」
「はい」

私だって、そんなことはわかっている。
健斗先生が今何を言いたいのかも理解している。
でも、そう簡単な話ではないのだ。
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