再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
どのくらい、俺たちはそうしていたのだろう。
沙月の体温と俺の体が同化していくように感じていた。

「このまま2人で抜け出すか?」
「バカなことを言わないで」

たとえ相手が若い医者でも、子供の父親だったとしても、もう遠慮はしない。
俺は沙月を、2度と失いたくはないんだ。
そのためなら多少汚い手を使ってでも、俺は沙月を奪い返す。
この時の俺は、何か吹っ切れたものを感じていた。

「なあ、一体何があったんだ?」

改めて沙月の顔を見て、やはり疲れの色が見える。
どこか具合が悪いというよりも、疲労困憊の様子だ。

「私にだって、悩みくらいあるわ」

精一杯の作り笑顔を俺に向ける沙月は、いつもとは違う。
きっと大きな心配事を抱えているんだろうが・・・
こいつは絶対に言わないだろうな。
それなら、別の方法で探ってみるか。
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