再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「悪い、待たせたな尊人」
「いや、気にするな」

その日の内に、幼馴染であり顧問弁護士でもある慎之介を俺はホテルのバーに呼び出した。

「それにしても、お前が呼び出すなんて珍しいな」
「そうか?」
とは言ったものの、慎之介と飲みに出るのはいつぶりだろう。

日本に帰るたびに顔を合わせていたような気がするが、それでも1年ぶりくらいだろうか?
ここのところ仕事が忙しすぎて飲みに出る暇もなかったからな。

「どうした、わざわざ俺を誘うからには何か用事があるんだろ?」
「そのことなんだが・・・」

俺の知り合いの中で、沙月のことを一番よく知るのは慎之介だろうと思う。
同じ職場にいたのなら俺のいなかった間のことも知っているわけだし、こいつに聞くのが一番いいだろうと俺は判断した。

「最近、沙月の様子がおかしいんだ」
「おかしいって、どんな風に?」
さすがの慎之介も表情が硬くなる。

「いつもどこか上の空で、何か考えことをしているように見えるんだ」

具体的にどこがと言われるとうまく表現できないが、時々ボーっとして呼んでも気が付かないこともあるし、仕事上の小さなミスも増えている。
それに、笑わなくなった。

「それって、お前のせいじゃないのか?」
「どういう意味だよ」
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