再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「すまないクライアントからの電話だ。沙月ちゃん尊人の相手をしておいてくれる?」
「え、ええ」
突然かかってきた電話を手に事務室へと消えて行く慎之介先生。
空になったトレーを持って部屋を出るところだった私は、再び尊人さんの方へ向き直った。
「お相手してくれるの?」
「え?」
急にいたずらっぽい笑顔を向けられて、私の動きが止まった。
「慎之介は『沙月ちゃん』って呼ぶんだな」
「ええ、職場の皆さんもそう呼ぶので」
みんな親しみを込めて呼んでいるのだろうと思う。
「俺も『沙月ちゃん』って呼んでいい?」
「ダメですよ」
何言っているんですかと、睨んでしまった。
「昔は『沙月」って呼んでいたのに」
「いつの話ですか」
「たった5年前のことだよ」
もう忘れたのかとでも言いたそうに、尊人さんが私を見る。
何だろうこの雰囲気。
私と尊人さんはすでに終わった関係で、そのことは尊人さんだって納得してくれたはず。
それなのに・・・
「結婚、していないんだな?」
「結、婚?」
何を聞かれたのかがわからなくて返事が止まった。
「していないよね。さっき『佐山』って名乗っていたものな」
「そうですね」
確かに独身のままだ。
それにしても、みんなが見逃してしまいそうな小さなことまで記憶して推測するのは、頭のいい尊人さんらしい癖。
付き合っていたころから私のつくどんな小さな嘘でも見破ってしまうから、私は誤魔化すのに必死だったっけ。
「今は、1人なの?」
「いいえ」
きっと彼氏はいるのかって意味だろうけれど、私には凛人がいる。
1人ではありませんの意味を込めて、はっきりと答えた。
「え、ええ」
突然かかってきた電話を手に事務室へと消えて行く慎之介先生。
空になったトレーを持って部屋を出るところだった私は、再び尊人さんの方へ向き直った。
「お相手してくれるの?」
「え?」
急にいたずらっぽい笑顔を向けられて、私の動きが止まった。
「慎之介は『沙月ちゃん』って呼ぶんだな」
「ええ、職場の皆さんもそう呼ぶので」
みんな親しみを込めて呼んでいるのだろうと思う。
「俺も『沙月ちゃん』って呼んでいい?」
「ダメですよ」
何言っているんですかと、睨んでしまった。
「昔は『沙月」って呼んでいたのに」
「いつの話ですか」
「たった5年前のことだよ」
もう忘れたのかとでも言いたそうに、尊人さんが私を見る。
何だろうこの雰囲気。
私と尊人さんはすでに終わった関係で、そのことは尊人さんだって納得してくれたはず。
それなのに・・・
「結婚、していないんだな?」
「結、婚?」
何を聞かれたのかがわからなくて返事が止まった。
「していないよね。さっき『佐山』って名乗っていたものな」
「そうですね」
確かに独身のままだ。
それにしても、みんなが見逃してしまいそうな小さなことまで記憶して推測するのは、頭のいい尊人さんらしい癖。
付き合っていたころから私のつくどんな小さな嘘でも見破ってしまうから、私は誤魔化すのに必死だったっけ。
「今は、1人なの?」
「いいえ」
きっと彼氏はいるのかって意味だろうけれど、私には凛人がいる。
1人ではありませんの意味を込めて、はっきりと答えた。