再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
凛人の寝かしつけが終わってリビングに戻ると、テーブルの上に渇き物のおつまみとグラスが用意されていた。

「凛人君は寝た?」
「ええ、いつもより興奮気味だったけれどやっと寝ました」
「そうかご苦労様。沙月も飲むだろ、ビールでいいか?」
「ええ、じゃあ少しだけ」

こうして尊人と二人で飲むのはいつぶりだろう。
懐かしいようでいて、もうずいぶん昔のことのような気もする。

「ところで今回のことだが、絢子さんがかかわっているらしいって沙月は気づいていたのか?」
「それは・・・」

他に心当たりがないからそうだろうなと思っていただけで、何か確証がある訳ではない。

「まず、何があったのかを教えてくれ」
まじめな顔で見つめられる尊の眼差しは、とても真剣だ。

尊人が誰から聞いたのかはわからないけれど、アパートに来てあの玄関扉を見られたからには言い逃れはできないだろう。
私は正直に、ここ10日間に起きたことを告白した。

「たとえどんなことでも、困っていることがあれば相談してほしかったな」
「ごめんなさい」

余計な心配をかけたくなくて話さなかったけれど、こうなってしまったからには謝るしかない。
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