再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「あの時の私はまだ子供だったから、尊人に愛される自信がなかったの。大人な尊人の横に自分がいることが不釣り合いな気が常にしていた。だから、絢子さんの話がすごく真っ当に聞こえたのよ」
「だからって・・・」
黙って逃げ出さなくてもいいだろうと、尊人は言いたいのだろう。

確かに、今の私ならそんなことはしなかったかもしれない。
でもあの時の私は、自分が愛されている確証が欲しかった。

「あの時、本心では別れたくなかった」

自分で別れをきりだしておいてバカな話だけれど、私は尊人に引き留めてもらうのを待っていたのよ。
それを若気の至りだと言ってしまえばそれまでだが、あの時に私は自分の居場所を見つけることに必死だった。
それだけ私が子供だったってことだろう。

「そんな・・・」
尊人は絶句したまま天を仰いでしまった。
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