再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「いつまでそうしているつもり?」
20畳以上はありそうな広い洋室に通されてから15分ほどして男性が口を開いた。

部屋に入ると同時に着替えとタオルが用意され、私はシャワーを勧められた。
だからと言って、すぐには動くこともできず私はその場に立っている。
そもそもここまでついてきたこと自体が後先を考えない無謀な行動だったようにも思う。
冷静に考えれば初対面の人について行くなんてどうかしていた。
その原因が私の弱った心のせいなのか、男性があまりにも魅力的だったのかはわからないけれど、今ここにいることが非現実の出来事のように感じていた。

「このままでは本当に風邪をひいてしまうよ。お願いだから着替えてきて」
重厚そうなソファーに座り、それまでじっと私を見ていた男性もさすがにしびれを切らしたらしい。
確かにいつもでもこのままではらちが明かない。
仕方ない。私が折れるしかないようだ。

「じゃあ、着替えをお借りします」
「うん。せっかくだから温まってきて」
「はい」

さすがにこれ以上は抵抗する気にもならず、私は浴室へと向かった。
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