再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「なるほどお酒をかけられたのか」
「ええ」

今日のカラオケ店での顛末を説明すると、男性も納得してくれた。
もちろん「夜遅い時間のバイトは危険も多いし、感心しないな」と言われたけれど、そこは気にしない。
お金持ちの男性には私の気持ちはわからないだろうし、どうせもう2度と会うことのない人だ。

トントン。
廊下からドアをノックする音。
何だろうと視線を送る私の向かいから男性が立ちあがった。

「お腹が空いたから適当に頼んだんだよ」

ドアを開けるとワゴンに乗せられて運ばれてきた料理。
いつの間にかテーブルが出され、食器がセッティングされていく。

「さあどうぞ」

ものの数分で料理や飲み物が並び、運んできたスタッフも出て行った。
そして、唖然として見ていた私に男性が椅子を引いてくれる。

「ありがとうございます」

本当にいいのだろうかとも思いながら、拒絶することも出来な私は席に着いた。

「どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
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