再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「ええ、ですから・・・」
何度も言葉を詰まらせる男性。

どうやらかなり困った電話のようだ。
さっきから時々天を仰ぎながら眉間にしわを寄せている。

「しかしすぐには・・・はい、はい、わかりました」
最終的に男性の方が折れてしまったらしい。

はあー。
電話を切った後大きく息を吐いた男性は、私の方に向き直った。

「お仕事ですか?」
聞いてもいいのだろうかと躊躇ったが、落胆が男性の態度から見て取れてつい聞いてしまった。

「いや、父だよ」
「お父さん、ですか」

それにしては改まった口調だった気がする。
もちろん世の中には色んな親子がいるのだから一概には言えないが、少しよそよそしさを感じてしまった。

「父ではあるけれど、会社の上司でもあるからついこんな口調になるんだよ」
「そうですか」

なるほどそう言われれば、上司と部下そんな感じだった。

「で、何か困りごとですか?」
聞こえてきた限りでは男性が困っていたように思えて、気になった。

「お見合いをしろってうるさくてね」
「おみ、あい?」
もっとすごいことを言われると思っていたのに、ちょっと拍子抜け。

「今、お見合いなんてと思っただろう」
「ええ」
取り繕う必要もないかと私は素直にうなずいた。

別にいきなり結婚しろって言われたわけでもあるまいし、お見合いくらいすればいいじゃない。
この時の私はそう思っていた。
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