再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
食事の片付けも終わり、私達は再びソファーで向かい合った。
その間に互いの名前だけは名乗り、私たちは『尊人さん』『沙月ちゃん』と呼びあうことになった。

「まだ若そうなのに、沙月ちゃんはお見合い肯定派なのか?」
「別に肯定派ってこともないですが・・・」

うちの両親は駆け落ちで一緒になっていた。
お金持ちのお嬢様だった母はたまたま知り合った苦学生の父と恋に落ち、家を捨てて結婚した。
当然母の実家は大反対で、20年以上たった今でも絶縁状態が続いている。
そんな両親を見ているからだろうか、結婚は育った環境が似ていて価値観の合った者同士でするのが一番だと私は思っている。
だから、お見合いに反対はしない。

「結婚は好きな人と恋に落ちてとか思わないの?」
なんだか尊人さんが不思議そうな顔。

「そうですね。人は変わるものだし、一時の感情で突っ走って後々後悔したくはありませんから」

うちの両親が不幸だったというつもりは無いが、苦労が多かったのは間違いないと思う。
苦労を知らずに育った母はもちろん、父も母と家族のために人一倍働いてきた。
小さな会社を興し、数人の従業員を使っていても時には経営不振に見舞われるときもある。
そんな時だって母の実家は一切援助をしなかった。
それどころか、何度も何度も母に帰ってくるようにと連絡をよこし父と母の別れを望み続けていた。
まあ、母自身がひとりっ子で母以外家を継ぐ者がいないからしかたがないかもしれないけれど、あまりにもひどいやり方だと思う。
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