再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「人を好きになるって、理屈じゃなくて本能なんだけれどね。沙月ちゃんにはまだわからないか」
「ええ、わかりません。だったらわかるように教えてください」

尊人さんの言い方にカチンときて、悔し紛れに言い返した。

「本気で言っている?」
「ええ」
売り言葉に買い言葉。
意固地な私は引っ込みがつかなくなって、それでも尊人さんを睨みつけた。

後から考えればバカな行動だったと思う。
でもなぜか、この時の私は尊人さんに惹かれていた。

「悪いけれど、俺も今日はそんなに紳士ではないんだ。色々と嫌なことがあって優しくしてやれないと思う。それでもいいのか?」

これはきっと『抱いてもいいのか』と聞かれているのだろう。
そして、律儀に確認するところがまた尊人さんらしいなと思えた。

「逃げ出すなら今だぞ」
「いいえ」

私は逃げない。
私の本能が、尊人さんに触れたいと言っている。
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