再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
一晩明けて別れの時、当然のように連絡先を聞かれたけれど、私は『沙月』と言う名前以上のことは答えなかった。

「どうして嫌なの?そんなに俺が信用できない?」

困ったようにじっと見つめられれば、昨夜を思い出して体が熱くなる。
それでも、もう2度と会う事はないと私は思っていた。

「もしかしてこれが運命の出会いかもしれないだろ?」
スマホを握りしめながら、尊人さんは食い下がる。

「もしこの出会いが運命だったなら、きっとまた会うこともあるはずですよ」
だから今日はこのまま別れましょうと、私は別れを告げた。
運命の人なんてそう簡単には現れないはずだった。

この時の私は運命の出会いを甘く見ていたのかもしれない。
大都会東京で偶然に2度も会うなんてことは全く想定していなかった。
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