再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
尊人さんとの一夜の出会いから一ヶ月後。
当時私がバイトをしていたセレクトショップに、突然尊人さん現れたのだ。
見た瞬間、私はびっくりして固まった。

「い、いらっしゃいませ」
「こんにちは」

そこは自然食品や天然素材のものを扱うセレクトショップ『コットンハウス』。
オーナーの美貴さんが3年前に始めた店で、素材と品ぞろえにこだわった人気店だ。
店の一角にカウンター席5席ほどのカフェスペースがあり、有機栽培のコーヒーや紅茶、簡単な食事も提供している。

「素敵なお店ですね」
「ありがとうございます」

美貴さんに声をかけてからカウンター席に座った尊人さんを、私は少し離れた位置から見ていた。

「うち会社でこちらのコーヒーを飲んでいてあんまり美味しいからやって来たんだが・・・結構種類があるんですね」
何種類かあるコーヒーのメニューを見ながら、尊人さんが首を傾げる。

「こちらからお届けしている会社さんはそう多くないんですが、どちらの会社か教えていただければ銘柄がわかるかもしれません」
悩んでいる様子を見た美貴さんが尋ねると、尊人さんは名刺を取り出した。

「MISASの専務さんでしたか、それは失礼しました。MISASAの秘書室に収めさせていただいているのはうちのオリジナルブレンドです。癖がなくてとっても飲みやすいのが特徴なんですよ」
「ああ確かに、酸味も苦みも強すぎず飲みやすい。じゃあそれをお願いします」
「はい」

MISASAと言えば三朝財閥のメイン企業。
チラッと見えた名刺の名前は三朝尊人さんとなっていたから、三朝財閥の関係者ってことなのだろう。
どうやら私はとんでもない人と知り合いだったらしい。

「ねえ沙月ちゃん、そのベーグルサンドも一緒にもらえるかな?」
「え?」
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