再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「母さんこれ少ないけれど」
テーブルの上に置いた茶色の封筒。

「あら、いいのよ。もう徹も働くようになったし、あなただって凛人のためにお金がいるでしょ?」
「うん、でも私は大丈夫だから」

もともと体が丈夫でなかった母は5年前に父が亡くなって以来、父の残したお金で細々と暮らしている。
何度か仕事に出てみようとしたようだけれど、すぐに体調を壊し長くは続かなかった。
もちろん私にも余裕がある訳ではないが、ボーナスが出た時にはいくらか実家に入れることにしている。

「姉ちゃん、これからは俺が働くんだからもう心配するな」
そう言うと、徹が封筒を私の鞄に戻してしまった。

「いいの?まだ研修医でしょ?」
「ああ、だけど姉ちゃんよりはもらってる」
「へー」
そうですか。

そこまで言われれば、引っ込めるしかない。
そうか、徹がお医者さんなのねえ。
なんだか感慨深いな。

「それより姉ちゃん、そろそろ家に戻ってこないか?」
「え?」
いきなり言われ、私は口を開けたままになった。
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