再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
週明け月曜日の夕方。

「沙月ちゃん、今日は行くでしょ?」
「ええ、長居はできませんが参加します」

今日は事務所恒例の飲み会で、幹事を引き受けた先輩が出欠の確認に動いているようだ。
毎年8月のお盆明けにと決まっている納涼祭と言う名の飲み会。
いつもは焼肉屋さんかビアガーデンでやるのに、今年は珍しく料亭での開催。
費用は全部事務所持ちとはいえ随分高いんじゃないだろうかと秘かに心配している。


夕方7時。
仕事が終わった人からタクシーに乗り込みやってきた老舗料亭。

「沙月ちゃん、こっちだよ」

大先生に手招きされて店に入ったけれど・・・

「凄いですね」
立派な日本庭園を見ながら思わず声が出た。

ここは会社の飲み会で使うような場所ではなく、接待や政治家の会食なんかで使う店。
間違ってもみんなで大騒ぎをするような所ではない。

「あの大先生、何でここなんですか?」
いつもとは全く違うお店のチョイスが気になった。

「ああ、今日はゲストがいてね、その人のリクエストなんだ」
「取引先の人ってことですか?」
「うん、まあそんな所かな」

接待なら事務所の飲み会と一緒にしなくてもいいだろうに、変なの。
そう思ってもまさか口に出すわけにもいかず、私は黙って会場へと向かった。
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