再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない～運命なんて信じないはずでした～

乾杯から１時間半。
こっそりと部屋を出たところで、大先生に遭遇した。

「あれ、沙月ちゃん帰るの？」
「すみません、お先に失礼します」

まだみんな盛り上がっているところだけれど、私は帰らせてもらうつもりだ。

「いいよ気にしなくて。慎之介にも言っておくから」
「ありがとうございます」

本当は帰る前に伝えようと思っていたけれど、尊人さんのすぐ隣にいた慎之介先生には声がかけられなかったから、大先生に伝えられてよかった。

「気を付けて帰りなさいね」
「はい。お疲れ様です」

私が子育てしながら働いていることを理解してくれている大先生も慎之介先生も色々と気を使ってくれる。
飲み会の時も強引に誘うようなことはされないし、途中で抜けるのも理解してくれている。
決して特別扱いはしないけれど、無理のない程度の小さな気遣いが私にとっては本当にありがたい。