再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
尊人さんの強引さは、5年経っても変わっていなかった。
待ってくださいとお願いする私を無視して車を降りてしまった尊人さんが、私の隣に並んで歩きだしたのだ。

「ゲストが途中で帰ってどうするんですか」
いきなり現れたことに不満もあって、つい愚痴になった。

「取引先の人間なんて金だけ払って消えた方がいいじゃないか。きっと今頃みんなで盛り上げっているよ」
「それは・・・」
そうかもしれませんが。
だったらなぜわざわざやって来たんですかとは、怖くて聞けなかった。

こうして並んで歩くのはいつぶりだろう。
付き合っている頃は、すれ違う人たちが振り返るほど完璧な見た目の尊人さんが自慢でもあり、その隣にいる自分が不釣り合いなようで引け目を感じていた。
一生懸命背伸びをして大人な格好をしていたな。

クスッ。
バカだな、思い出し笑いなんて。

「どうかした?」
「いえ、なんでも」

何の会話をするわけでもなく、私達は駅の改札まで来た。

「あの、私はここで」
「ああ、そうだね」

もしかして引き留められると思ったのに、すんなりうなずいた尊人さんに少し驚く。
一体、彼はここまで何をしに来たのだろう。
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