再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「まま、ぼたん」
「はいはい、ちょっと待ってね」

4歳になり何でも自分でしたがるようにはなったけれど、ボタンかけやリボン結びなどはさすがにできないから私がやってあげる。
ただ、朝は私自身も出勤の支度がありつきっきりになることもできない。

「はい、ボタンもリボンもOK。ママも支度するからもう少し待ってね」

洋服を直しクリクリの髪をとかしてやると、凛人はとっもかわいくなった。
さあ後は私の身支度だ。

私は佐山沙月。27歳のシングルマザー。
身長170センチと女性にしては大柄。
十代の頃にはふっくらしていた頃もあったけれど、凛人を産んでからは太る暇もなくなってしまいどちらかと言うと細身の体形。
髪は真っ黒なストレートを肩まで伸ばしいつも1つに括って地味にしているが、その身長のせいでやはり目立ってしまうことが難点だ。

「まま、おけしょうは?」
「うん、するわよ」

家ではノーメイクの私も、仕事に行くときには最低限のメイクはする。
目も鼻も唇も1つ1つのパーツが大きい私はちょっと化粧しただけで派手に見えがちだから、あくまでもナチュルメイクを心掛けている。

「さあできた。凛人行きましょう」

朝の慌ただしい支度が終わり、私は凛人の手を引いてアパートを駆け出した。
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