再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない～運命なんて信じないはずでした～

雨の中傘もささずに歩いていた彼女にぶつかり、たまたま舞い上がった水しぶきを彼女が被ってしまったことに俺は責任を感じた。

背が高くてスタイルのいい若い女の子。
近づいた瞬間にお酒に匂いがして、酔っぱらっているならなおさら放ってはおけないと行きつけのクラブに連れて行った。
部屋と着替えを用意させてシャワーも勧めた。
しかし、シャワーから出てきた彼女からまったくお酒の匂いがしなくて、この時になって酔っぱらってはいなかったんだと知った。
食事をしながら事の顛末を聞き、話をしているうちに面白い子だなと興味を持った。

そこにかかってきた親父からの電話。
約束をすっぽかしたからにはきっとかかってくると思ってはいたし、くどくど文句を言われるのも覚悟していた。
しかし・・・

「お仕事ですか？」
遠慮気味に聞いてきた彼女に
「いや、父だよ」
俺は隠すことなく答えた。

「お父さん、ですか」
きっと親子の会話には聞こえなかったのだろう。彼女が不思議そうな顔をしている。

「父ではあるけれど、会社の上司でもあるからついこんな口調になるんだよ」
さすがに言い訳したい気分になって、一言添えてみた。

「で、何か困りごとですか？」
「お見合いをしろってうるさくてね」
今更隠すこともないだろうとした告白。

「おみ、あい？」
ちょっと呆れたような顔。

「今、お見合いなんてと思っただろう」
「ええ」

きっと彼女にはこのお見合いの意味がわかっていないんだろな。